石井由希子さんの音楽世界
〜 強く優しく繊細に…「三連符」舞う 〜
作曲家石井由希子さんを、私は密かに「三連符Queen」=「三連符の女王」と呼ばせて頂いている。
そんな彼女の音楽に初めて出会ったのは、確か2008年の春。
ドルチェ邦楽合奏団に書き下ろした「竹取りものがたり」のリハーサルの時だった。ご存知「かぐや姫」の物語である。
平安時代末期に書かれた日本最古の不思議な物語をベースに、
50人編成の邦楽オーケストラの演奏と30人の合唱隊、そして語りと歌を担うバリトンとソプラノのソリストによる
「邦楽歌物語」ともいうべき形式の脚本と歌詞を書かせて頂いたのだが、
初めて耳にした石井さんの音楽は、邦楽器ならではの華麗さと深い陰影に満ち、
時に鋼のような強さも兼ね備えていて、私は瞬時にその虜になった。
分けても、奏でるにも歌うにも難易度が高いはずの「三連符」が、
変幻自在に舞い上がり舞い降り飛び交う旋律運びが、変幻自在ともいうべき音楽世界を紡ぎあげていた。
隣の席に、楽譜を目で追う石井さんがおられたのだが、この穏やかな女性のどこからこれほど華麗で強靭な音楽が生まれるのかと、
不思議な思いに打たれたのだった。
それ以来、ドルチェ邦楽合奏団の5年ごとの周年記念コンサートに「邦楽歌物語」の脚本と作詞を合計3本、手がけさせて頂いた。
その度に、石井さんの音楽世界は一層深く、美しく、強く輝きを増す。
さてそろそろ、コロナを乗り越えた先の、新たな作品の企画を語り合わねば、ですね。
西田豊子(劇作家・演出家)